別離と帰還(4)
近年の脳医学者たちが、こぞって研究している障害がある。
和名を変異性遺伝子障害。
この障害は原因・治療法共に不明だが、生命を脅かすような症状は殆ど無い。
ならば大仰に研究などせずに、そっと放置しておけば良さそうなものだが、
学者が騒ぐには騒ぐなりの理由がある。
その障害を持つ者の、20人に1人が超能力者なのだ。
よって研究も医学的見地というより、科学的な見地で進められていると言える。
あるいは、表立ってはいないけれども、軍事的な見地で。
一口に超能力と言ってもその表れは多種多様だ。
空を飛ぶ力。外見を変化させる力。衝撃波を放つ力。……などなど、挙数に暇がない。
そんな能力者の中で最も高い能力を持つとされているのが、種別XX(ダブルエックス)障害だ。
あまりに膨大なエネルギーは、手術やアクセサリーでコントロールしないと暴発してしまい、
感情的になると、周囲のあらゆるものを意図せずして破壊してしまうとさえ言われている。
そんな種別XX障害者が、この殺人ゲームの参加者の一人に選ばれていた。
仁村知佳(No.40)である。