それぞれの判断(1)

Prev<< 1st >>Next


(1日目 5:50)

 鬼作は考えをまとめた。
「(‥‥どっちに取り入る? そんなこたぁ簡単よ。安直に考えりゃ、あの小娘の方だ。
だがよ。さっきの二人の話からすりゃ‥‥ヤベェのも、あのロボットだかサイボーグ
だかの小娘の方だ。まだ兄ちゃんの方が付け込む隙がある‥‥)」

 もうナミには明らかに迷いは無い。言っていた通りに、いかにして自分以外の敵を
効率的に倒すかを考えている。多分、交渉どころか、話に持ち込む前にやられてしまう
公算の方が遥かに高いだろう。当然、逃げられるはずも無い。
 だがアズライトの方には‥‥未だに僅かながらも迷いが見て取れる。
 相手を騙し上手く取り入るのなら間違いなく“迷い”がある方だ。その迷いに付け
入れば、より成功率は高まる。
 無論それでも“如何にして交渉に持ち込むか”と言う問題はあるが、彼我の戦闘能力
の差は歴然なのだから、それも巧みに話に盛り込めれば‥‥。
「(それによ、あの小娘の方の相手は名前が判らねぇしな。ネタは多いに越したこたぁ
ない)」
 楽観的観測には違いないが、とにかく今は生き延びることにだけ集中した方がいい。
下手なことを考えて自分の首を締めるようになったら身も蓋も無い。あわよくば‥‥
などと二兎を追った挙句に自分が死んでしまっては元も子もない。
 そう言うことは、こんな物騒な場所では考えない方がいい。
「(追い込み掛けた女が化け物だった、なんざシャレにならねぇからな。とにかく今は
生き延びることにだけ知恵を使った方が利口ってもんよ)」

 あとは如何にして交渉まで持ち込むか。
 ヘタに卑屈に近づくのは得策では無いだろう。また自分が“完全な弱者だ”などと
思われるのもまずい。武力・戦闘能力は無くとも‥‥と思わせなければ。
「(さぁて。これからが俺の腕の見せ所ってな‥‥)」
 自分の荷物の中に必要なものがあることを鬼作は確認した。ノートとペンだ。これ
を使えば間近まで近寄る必要はなくなる。
「(おっと。ヤツ‥‥アズライトとか言ったっけな。ここでヤツを見失ったら元も子も
ねぇ‥‥)」
 鬼作はアズライトを見失わないよう注意しながら、その後を追い始めた。



Prev<< 1st >>Next