見えざる戦い(2)

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「俺達に戦う気はありません」
恭也が話し掛けると、ワープ番長は警戒の色を緩めず、こう答えた。
「ボクは、キミたち次第だ」
彼は続ける。
「ボクはね。過去にとても大事な友達だと思っていたヤツにね、裏切られたことがあってね。
 ……タライで島流しにされたんだ。
 その失敗以降、ボクは人を軽々しく信用すべきではないと思っている」
「そうですか……では、どうしたら信用してもらえるのですか?」
「たとえばね。AM3:00。ボクは、徹夜で仕事をしている途中で腹が減って、
 コンビニへ夜食を買いに自転車を走らせたんだ」
「??」
突飛な例えに、首をひねる恭也と秋穂。
「その時、なにげなく夜空を見上げたら、そこには一面の流星雨……
 ぼくはその美しさに心震わす。
 そして思う。この感動は独占してはいけないと。友と分かち合うべきものだと」
恭也はその情景を想像する。
深遠な宇宙と、煌く星々が織り成す壮大なファンタジー。
美由紀、なのは、フィアッセ……皆目を輝かせて喜ぶだろう。
「だからね、ボクはコンビニ前の公衆電話から、君に電話したんだ。
 『寝てる場合じゃない、今すぐ起きて、空を見上げるんだ』とね。
 さあ、君はどう答える?」
「ありがとう。俺もさっそく友人や家族に伝えるよ……ですね」
「それだ!」
ワープ番長は指をパチンと鳴らし、嬉しげに頷く。
「その気持ちが大切なんだ、キミ。
 つまり、信頼とは―――互いの感性を共有できるかということ。
 嬉しいときは一緒に喜び、悲しいときは共に泣く。
 心の一体感こそが、信頼感なんだ」
恭也はその言葉に深く感動すると同時に、外見だけで猪乃に警戒心を持ってしまった自分を恥じた。
この人とならやってゆける。
「猪乃さん。あなたは正しい。是非俺たちと……」
「ちょっと待って」
……行動を共にして欲しい。
そういいかけた恭也の言葉を、秋穂が遮る。
「ちょっと結論を出すのを待ってくれないかな、恭也くん。
 私も1つ、聞いてみたいことがあるの」


「健くん……っていったわね。きみが嫌いなものって何?」
「SCEだ」
即答する。
「ヤツラは記号論者だ。拝金主義者だ。ゲームの文化性を認めず玩具の括りに従属させる白痴共だ」
いまいましげに吠える。
「じゃあ、私もたとえ話をするわね。
 あなたの友達がね、SCEの人とも仲良くしているの。」
「ありえない」
「その友達は君にこう言うの。
 『猪乃、視野を広く持とう。SCEと仲良くすることは、君のためになる』」
「そんなことはいわない」
「心の底から君の為を思っての発言よ?」
「ボクの心を知る者が、ボクを不快にさせるわけがない。
 キミはボクを怒らせたいのか?」
「わかったわ。あなたはこう考えているのね?
 仲間はあなたの考え全てを否定しない。仲間はあなたの言うことを何でも聞く。
 仲間はあなたを不快にさせない。そういう存在を指すのだと」
秋穂が言葉を紡ぐたび、猪乃の白い顔は、どんどん紅潮してゆく。
「猪乃くん。私たちはね、それを仲間とは呼ばないの」
秋穂は恭也に小太刀を手渡しながら、言った。
「奴隷って呼ぶのよ」



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