愛に狂った鬼と鬼。 その陰に鬼、もう一匹。(1)

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(1日目 5:30)

 ナミは、またしても物騒な武器を手に入れていた。
 千鶴のデイバッグから入手した手榴弾(×3)だ。
 今、ナミは山の麓に位置する火成岩ばかりの荒れ野で、50Mほど先を歩いている男・広田寛に、
 それを使用するところだった。
 ピンを抜き、狙いをやや対象の手前に設定して放り投げる。

  ひゅるるるるる……

 広田は、ふらりとよろめいた。
 それから遅れること0.3秒後、ナミが投じた手榴弾が、彼の4M手前で爆発する。
 轟く爆音と渦巻く炎、舞い上がる白煙。
 泥土や削岩が機関銃のように飛び散り、広田を無数の肉片へと分解した。

 ……しかしナミは、その爆発を確認することなく、
 0.3秒前の映像のリプレイを、コマ送りで脳内解析していた。
 その奥のほうに、なにやら小さなノイズが発生している。
(爆発前によろめいていたのは、このノイズと関係しているのでしょうか?)
   command:画像拡大。
   command:画像拡大。
   command:画像拡大。
   command:ジャギ処理。
   command:色調補正。
   …………。
 100を超えるプロセスを2秒ほどでこなし、
 ノイズ部分の画像を信用度93%の確率で導き出した結論は以下のようなものだった。

  *対象者の北西4Mほどの岩陰に潜んでいる男が投じた何か(その何かの解析は不能)が
  *対象者の身体を貫通し、手榴弾が爆発するより先に、対象者を絶命させた。

 銃器やそれに類する道具でこの結果ならば納得である。
 しかし、ズームアップされた画像に映る眼鏡の男は、明らかに素手でその何かを投じていたのだ。
 昨日までのナミの中枢コンならば、解析エラーを返したであろう。
 しかし、2時間ほど前の死闘で、ナミの人工知能はいやというほど学習していたのだ。
 UNKNOWNで、脅威クラスS級のヒト型生命体が存在することを。

「この島は、本当に、信じられないことだらけですよ、ご主人様。」
 メッセージを送りながら、手榴弾のピンを抜いたナミは、それを岩陰の男に向かい、投じた。



死亡:【No.35 広田寛】
――――――――残り35人。


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