私のような天才が
こんなつまらんゲームで命を落としてしまっては、
世界的損失である。
だから、生きる。
文句は無いはずだ。(2)
(4:40)
「はぁ、はぁ……」
これで縫合完了だ。
痛みに何度か意識が飛びかけたが、そこは私だからこその精神力でカバー。
8針……まあ、本職の医者よりはかなり荒い縫い目だから、実際は10〜12針程度か。
とにかく、疲れた。
背広は脂汗でびしょびしょだ。
やれやれ。
体力の低下を防ぐためには、これも脱がないとな。
まだ眠るわけにはいかん。
ずり……ずり……
く。
脱いだはいいが、体中が灰まみれだ。
気持ち悪い。
シンデレラも、寝汗などかいたら翌朝はさぞ大変だったろう。
……ふむ。
さすがは超が3つほど付く名探偵の私だ。
図らずも童話の裏に隠された日常的真実を推理してしまったではないか。
しかし―――シンデレラか。
それはいい。
ならば最後には、この私に大いなる幸せが待っているだろう。
……さて、縁起の良い連想が頭に残っているうちに、寝るとするか。
―――む、いかんいかん。
意識を落とす前に、栄養を補給せねば。
折角病院で手に入れた点滴だ。
利用すべき時に利用しなくては意味が無い。
基本はブドウ糖だから、口から摂取しても十分な栄養となるはずだ。
チイィィィィ……
デイバックのファスナーを開く、と。
ボト。
貴神から手に入れた鉄の箱が転げ落ち、灰の山に埋もれかける。
……まあ、いい。
点滴が先だ。
ジー……ジジジ、ガガ。
ピーーーーー。
ん?
何の音だ?
「ザー……止血……た。……ジらく……いれば大……だ……」
ファントムの声!!
奴ら、私を追ってきたのか!?
「よかったぁ」
「……と、お前。パンツの換……ジジ……方が……思う…ザ」
「え、え」
……いや、違う。
この反響は、焼却炉内で声が聞こえているということだ。
転げ落ちた鉄の箱……ここが発生源だ。
ジッポを手に取り、箱に近づけてみる。
「ふむ。蓋が開いているな」
鉄の蓋を開けると、中に入っていたのはボタンが沢山あるた装置だった。
そのボタンの上には全て発光ダイオードが付いていて、うち1つが点っている。
浮かび上がる「25」の数字。
それから、装置の後ろから伸びるヘッドフォンのコード。
「これは……」
ヘッドフォン、装着。
適当にボタンを押してみる。
ポチ
ダイオードの発光位置が、そのボタンの上のものに変わる。
数字は「16」。
―――そして、音声も。
「ま、いっか。アタシはこの森の中では無敵なんだし。
放っときましょ、こけし。」
その横のボタン。
ポチ
ダイオードは「15」を示す。
「うぉおおおお、おま○こ、いっちゃう、おま○こ、いっちゃう!!」
……こいつ、何をやっているんだか。
でも、まあ。
やはり、これはそういうことなのだ。
「―――盗聴器、だな」
どうせ体力が戻るまでここでじっとしているつもりだった。
ならば、その時間をこれで有効活用させてもらおう。
情報収集は、探偵の基本中の基本だからな。