男のコと女の人(1)
(一日目 4:13)
貴神雷贈(No.10)の死体を発見した広場まひる(No.38)が最初に感じたのは、恐怖よりも悲しみだった。
恐怖と驚きを貼り付けたまま固まっている雷蔵の死に顔を見るだけで、その死に方のおおよそは想像がつく。
「どうしてひとは、ひとを傷つけることができるのかな。」
まひるは、雷蔵の両目をそっと閉じさせ、その両手を胸の前に組ませる。
組ませた腕の下、ちょうど心臓の位置に穴が空いていた。
(このおじさん、鉄砲で撃たれたんだ)
反射的にスカートのポケットに手を突っ込むと、冷たく硬い感触が手のひらに返ってきた。
支給武器、グロック17(拳銃)だ。
貫通力・殺傷力は低いものの、銃身のほとんどがプラスチックで出来いるので軽く、扱いやすい拳銃。
非力なまひるにも十分扱えるものだった。
そういう意味で彼は、当たりの武器を手に入れたと言えよう。
しかし。
まひるは銃身を指でもてあそびながら自問する。
それは、彼が学校を出発してから、何度も何度も繰り返してきた問いだ。
(あたしは、人を撃てるの?)
(殺されそうになったら、反撃できるの?)
相手の痛み。苦しさ。悲しみ。そして日々の生活を想像する。
家族もいるだろう。友達も。もしかしたら恋人もいるかもしれない。
ちくちく、ちくちく、胸が痛む。
(あたし、人を傷つけることなんてできない。
それで自分が傷つくことになっても。)
結局、その結論に落ち着く。
「あたし、お経とか分かんないけど。安らかに眠ってね、おじさん。」