男は、地獄のようなこの島についてかく語る。
「なに言いやがる、ここは天国だぜ」
(1日目 9:00)
あー、良く寝たぜ。
昨日ブルマ女にぶっ飛ばされた疲れもふっとんだってモンよ。
「おい鬼作、メシの用意だ」
……。
「鬼作……おい、鬼作!!」
俺を無視するたぁ、いい度胸じゃねえか?
ガキの頃から、懇切丁寧に体に教え込んでやってただろ。
俺に逆らうと、痛い目見るってよぉ?
「鬼作っ!!」
まだ出て来ない?
だったら悲しいことだけどよぉ、臭作のナイフで、ちょいと罰を与えちまうぜ?
ナイフ……
がさがさがさ
―――ナイフが無い!?
やつめ、まさか……いや、間違いねえ。
あの芋虫、この俺を置いて、トンズラしやがったんだ。
畜生ッ、畜生ッ、畜生ッ!!
がつッ、がつッ、がつッ!!
「痛ってえじゃねえか、畜生ッ!!」
怒りに任せて木を殴り飛ばしたら、拳が痛ぇじゃねえか。
これも芋虫のヤロウが消えちまったからだ。
銀蝿のヤロウも死にやがったし。
どうしてこうもクソ面白くねえことばかり続きやがるんだ!?
俺が何か悪いことをしたかよ!?
何も悪いことぁしてねえだろ?
好きなことをしてただけだ。
……しかし、なんで鬼作が俺の元から逃げる必要がある?
ウマい思いは組んでたほうがありつきやすい事ぁ、ヤツにだって十分解ってるはずだ。
俺、よ〜〜〜く思い出せ。
あの芋虫、どっかへんなとこ無かったか?
………。
『おい鬼作、ぼさっと突っ立ってんじゃねえ。行くぞ。』
『行くぞって、遺兄ィ、臭兄ィは?』
『そんなもンほっとけば、ウジがキレーにしてくれるさ。』
『でもよ…』
そーいや、銀蝿の屍体を見つけたとき、芋虫にゃ珍しく口答えしやがったよな。
それにその後、黙りこくってたし……命が惜しくなったってことか?
鬼作よぉ……俺達の命なんて、惜しむような命か、おぉ?
戸籍も無く、愛するものも無く、愛されることも無く。
路地裏でいつ野垂れ死んでも、誰一人気付くヤツもいないような社会のダニの俺達の命。
そんなモンを守りたいと、てめぇは考えたのか?
鬼作よぉ。
だいたい、生き延びて、それでどうするよ?
生きて帰ったとして、社会最底辺を這いずり回る虫ケラに過ぎねぇ俺達に、何の希望があるよ?
俺は、明日なんぞいらねえ。
死ぬ時ゃ、死ぬ。
あがいても、もがいても、どうしようもなく、ただ、死ぬ。
そんだけのこった。
だったら、今。
今、この瞬間の快楽が大事だろうが、おぉ?
明日のレイプを想像するより、目の前のオメコに突っ込むほうが何倍もキモチイイだろうが。
俺達にゃ、ここは天国なんだぜ?
ムカムカきたら、殺してもいいと。
ムラムラきたら、犯してもいいと。
社会や法律に抑圧されていた全ての欲望をぶちまけていいと。
そう、主催者様々がおっしゃてるんだからな。
おまけに、参加者にゃメスが一杯いるんだぜ?
可愛いの、別嬪なの、色っぺえの、よりどりみどりだぜ?
すんっっっっばらしいじゃねえか。
何の文句があるってんだよ、鬼作。
俺達は、この島に閉じ込められたんじゃない。
この島で開放されたんだよ。
よし、決めたぜ。
俺の人生の楽しみを、もう一つ増やしてやる。
鬼作―――癇に障る芋虫をブチ殺すって楽しみをな。