南下 朝の光景
7:00AM)
白砂が続く海岸線を寄り添うようにして歩く二つの人影、
一人の少女と一人の少年。
少女は押し黙って少し考え事をしているようだ。
(…なんかこいつと当然のごとく会話なんか交わしてるけど、
よく考えたら出会ってからそんなに時間たってないのよねー…)
双葉は海辺の砂を見ながらそんなことを考える。
(…こいつが王子様とか、守ってあげるとか
恥ずかしげもなくのたまうもんだからこっちも変に意識しちゃうんだ。
…でも、ひょっとしたら…本当に…)
そこで思考が中断された。
隣を歩く翼がうれしげな声で話し掛けてきたからだ。
「ねぇ、双葉ちゃん、灯台が見える。
あそこで女の子が僕のことを待ってるかもしれない。急ごう。」
(…やっぱ、違うな。…こいつは…)
そうして一つ嘆息し、侮蔑の表情を浮かべて
傍らの少年を半目でねめつける。
「はぁ?あんた何言ってんの。
誰もあんたのことなんか待っちゃいないわよ。
自意識過剰なんじゃないの?
それから人のことを気安く名前で呼ぶな。」
「何を言ってるんだい、双葉ちゃん。
あの灯台で可憐な少女が
今しも危険にさらされようとしているかもしれない。
ちょうど森の中で君が僕を待っていたように。」
「はぁ…、それが自意識過剰だってのよ。
大体、私はあんたを待ってたわけじゃないっ。」
「照れなくてもいいよ、双葉ちゃん。さぁ、行こう。」
そういって双葉の手をとり、歩き出す。
「あ…」
少し体温が上がった気がした。