別離と帰還(1)
(一日目 05:39)
朝の訪れを最初に知ったのは、皮肉にも朝日を最も憎んでいる男だった。
島の東端に位置する灯台の見張り台に立ち、今まさに昇らんとする太陽を暗い眼差しで睨めつける男。
名をグレン(No.9)と言う。
伝説の『天魔』を発見し天使へと育て上げた、魔術史に名が残るほどの偉大な魔術師だ。
だが、今の彼からは、才気の一片すら感じられなかった。
こけた頬。黄色くにごった目。乾きにささくれ立った唇。
伸び放題の髪。垢のたっぷり詰まった爪。
悪臭を通り越し、異臭すら漂わせているローブ。
その姿はどう見ても浮浪者でしかなかった。
(まばゆく輝くあの光が、全てを奪ったのだ……)
かすれた声で憎々しげに呟き、グレンは決別の日を思い出す。
娘であり、恋人であり、実験対象であり、崇拝対象であり……
グレンの全てだった、マナとの別離の朝を。