愛に狂った鬼と鬼。 その陰に鬼、もう一匹。(5)
兄・遺作に見切りをつけ、山の方角を目指していた鬼作は、
近くに生えていた広葉樹の低木に姿を隠し、
その壮絶な第二ラウンドの一部始終を観察していた。
(ブルマといい、この2人といい……おれ達みてぇなパンピーじゃ太刀打ちできんぜ。
こりゃあ、遺兄ィに見切りつけて正解だったなぁ、おい。)
鬼作は興奮していた。
握り締めたその両手の爪が掌に突き刺さり、血が流れ出していることにすら気付かないほど。
(レティシア……ご主人様……恋人のため、皆殺し、ギリギリまで協力……)
記憶に残る印象的な単語を頭の中で反芻する。
(ククク……いい、いいじゃねぇか……ぐっとクるじゃねぇか……
残してきたスウィート・ハートに未練タラタラならよぉ、
このおれの懐柔と相性ピッタシカンカンじゃねぇか!!
たまんねぇなぁ、おい)
邪にほくそえむ。
「さようなら。ナミは西の方へ行ってみようと思います」
「じゃあ、僕はこの山の向こうへいってみるよ」
「殺戮、がんばってくださいね」
「……そうだね、迷いは吹っ切らないと」
アズライトとナミはお互い背を向け、それぞれの方向へ向かって歩き出す。
(迷ってる時間はなさそうだ。おれが利用すべきは……どっちだ?)
そして鬼作は、決断した。