誤解に始まり、悪意が加速させる。(5)
「和解? くっ……」
戦闘の末の漁夫の利を狙っていた琢麿呂にとって、この展開は誤算だった。
彼が身を潜めているのは西側の階段。
魔屈堂たちとは正反対の位置にいる。
「ならば、ヤツらがこちらの存在に気がつかないうちに、病院から抜け出すか」
そう思い、そっと階段を2段ほど下ったとき、ふと琢麿呂は思い立った。
戦闘を誘発する妙案を。
それは彼の身もある程度危うくするが、たった一人しか生き残ることのできないゲームで、
強い敵を叩ける時に叩いておかないことは愚かだと、琢麿呂は判断する。
次にファントムに出会ったとき、今より有利な状況だとは限らない。
「……やるか」
アインと魔屈堂たちの距離が詰まるのをじっと待つ。
6M―――5M―――
―――4M。
「……このあたりだな。」
琢麿呂は勢い良く廊下へと飛び出した。
「ひっかかったな、バカめ!!」
琢麿呂は叫びと共にCOLT .45を連射。
ダン!!
ダン!!
1発目は見事、魔屈堂の左肩を撃ち抜いたが、
2発目はその反動で狙いがぶれたため、天井にぶち当たる。
「ぐむっ!!」衝撃で後ろへと倒れこむ魔屈堂。
「……謀ったのか!!」銃を構えなおすエーリヒ。
「……え?」銃声に目覚めた遙。
そして。
「……。」無駄のない動作で、素早くナイフを拾うアイン
それを見た琢麿呂は、作戦の成功を確信する。
「ファントム、さっさと逃げるぞ!!」
駄目押しの一言を残し、琢麿呂は階段に向かい、駆ける。