守りたいもの、ありますか?(6)
(一日目 3:50)
「…ちょっと、アンタ」
「何ですか?」
返事をしながら、恭也は秋穂の様子にちょっとした違和感を感じていた。
(あれ? 今俺のことをアンタって…それに何か目つきが変わってるような)
「はんっ、五月倶楽部が存在しないだの、アンタとあたいは違う世界の人間だの、果てはあのムカつく男が超能力者ですって?
気の利いたこといってくれるじゃないのさ!」
「……あ、あの、秋穂さん?」
「あたいはねえ、真面目にしてるべき時にそういうふざけたこという奴が大嫌いなんだよっ!」
「い、いえ、これはあくまで推論であって…」
「あぁ!? 推論だったら何言ってもいいってか? 大人を何だと思ってるんだよっ」
「……え、えーと」
「どうせあたいのことただのOLだと思って舐めてるんだろ? こう見えてもあたいはなぁ、元レディースで暴れまわってたんだぜ!」
「……い、いや、別に舐めてるわけじゃ…」
「いーや、アンタ絶対あたいのことを見くびってるだろ! じゃなきゃそんなふざけたことは…」
「! 誰か近づいてきます。そこに隠れましょう」
恭也は咄嗟に秋穂を近くの繁みに連れ込む。
「な、何すんだよっ。離せこの下衆野郎っ!」
「静かにしてください。相手が既に殺し合いに乗ってる危険があるから、隠れて様子を見ないと…」
秋穂は興奮して静かにしてくれなさそうなので、仕方なく恭也は口を塞いで黙らせる。
「むぐー。もがー」
(痛て。噛み付かれた。はは、元気な人だな。
さて、近づいてきてるのは……メイド服を来たロボット? ちょっとノエルに似てるかな)
息を殺しながら、接近してきた人物を繁みの中から観察し、知り合いの自動人形のことを思い出す。
(センサーでこっちのことがバレるかもしれないな。 その時は逃げた方がいいか?)
刹那、こちらに向かってロボットが接近してくる。
(バレた!)
恭也はすばやく秋穂を背負う。
「ちょ、ちょっと。どこ触ってんだよ! こら、離せって!」
「文句は逃げ切れたら気のすむまで言って下さい! とにかく今は逃げるのが先決です!」
「……分かったわよ」
不貞腐れたように言う秋穂。それを確認すると恭也は全力で走り出す。
(頼む、何とか逃げ切らせてくれよ!)
恭也は森の中央部を目指していた。
「あら? 逃げられちゃいました。せっかく獲物が二人もいたのに残念です。
でも、ナミはくじけません。ご主人様、見ていてくださいね!」
取り残されたナミはそう言うと、再び移動し始める。
新たな獲物を探す為に。