協調と崩壊と(1)

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(一日目 3:12)

何人かの者達が協調し、あるいは早過ぎる死を迎えていた時。
村落から少し北西に離れた農道でも、一つの戦いが繰り広げられていた。
ぱらららららっ
タイプライターを高速で叩くような音と共に、畑に弾痕が穿たれる。
「(1……2……3……32秒!)」
法条まりな(No,32)は音のした秒数をカウントしつつ、トラクターの陰に隠れていた。
彼女の手には何も握られてはいない、配給された武器には回数制限が存在している。
今はまだ使うべき時ではない。
そして……使うまでも無い。まりなは確信していた。
相手が完全に火器の、否、戦闘の素人であることははっきりしていたから。

あのタイプライターのような音は、明らかに機関銃であった。
しかし、配給袋に入るサイズとなると……間違い無くサブマシンガンとなる筈だ。
両者の距離は50メートル以上。月は雲に隠れてちょうど闇夜となっている。
足音さえ消そうとしない(その為、まりなは不意打ちを予測できた)素人が、
当てられるものではない。
一瞬だけ物陰から顔を出す。
ぱららららっ
慌てたように向こうの人影は動き、当らない射撃を繰り返す。
「2……3……45秒、よしッ!」
止んだ瞬間、まりなは自分に喝を入れると突然トラクターから飛び出した。


飛び出したまりなを見た人影は一瞬動揺したが、再び銃口を向けた。
ぱらららっ……。
まりなの足元に撃ち込まれる銃弾。しかし……。
……………。
すぐに止んでしまう。
「!?」
人影は焦ってサブマシンガンを抱えるが、
「遅いわよっ!」
既にまりなの姿は彼の眼前まで迫っていた。
「くぅっ!」
とっさに手にしていた得物をまりなに投げる影。だが、難無く避けられる。
サブマシンガンが地面に落ちる前に―――
「ハッ!」
まりなの一撃が影の鳩尾に叩き込まれていた。くの字に折れる体に、更に追撃が来る。
次の瞬間には影は手首を捕まれ、地面に組み伏せられていた。
「安心して。抵抗しなければ危害は加えないわ」
力を緩めずにまりなが言った。観念したのか、影の体から力が抜ける。
その時になって初めて、まりなは自分が組み伏せている人物が何者かを知った。
「あっ、あなた……!」
今回の参加者の中で最も彼女好みの顔だったから、はっきりと覚えていた。
木ノ下泰男。職業は……確かレストランのオーナーだったろうか?
部長に見せてもらった資料では、狂暴な側面は全くない男の筈であった。
「……………」



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