守りたいもの、ありますか?(4)

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(一日目 3:12)

 浅い眠りについていた恭也は、接近してくる足音にすぐに気付いて目を覚ました。
 足音は1つ。誰かに追われている様子はなさそうだ。
 音のする方角をしばらく見ていると、足音の主が姿を現した。女性だ。
 その女性は、恭也のいる木の近くで立ち止まると、独り言を言い始めた。
(壊れた? いや、違うか。理性を保つためにわざとやってるのか?)
 静観していた恭也だが、女性の「10kgくらい痩せたかしら?」という発言に思わず笑って返事をしてしまう。
 そして、恭也は地面に降り立ち……

「ところで、殺し合いに乗るつもりがないなら、あなたはどうするつもりなの?」

 ふと会話が途切れ、秋穂に姿を見せた経緯を思い返していた恭也は、質問されて我に帰った。
「俺は力無き人を守リたいと思ってます」
「ふぅん。でも、見たところ何も武器持ってないんじゃない?」
「今は丸腰だから、重武装した殺人鬼相手は少々荷が重いですけど」
 苦笑する恭也。ふと、いつもより自分が饒舌なことに気付く。
 自分はどうして大して警戒せずに彼女に姿を見せたのだろうか?
 異常な状況下にも関わらず、最初に遭遇した相手が冷静に会話できる女性だったので、
ゲーム開始以来張り詰めていた緊張が解けたのかもしれない。
(油断は禁物だ。気を引き締めないと。でも、何だか彼女とは話し易いな。
 …少し月村と似てるのかもしれない。髪の色も同じ紫だし。)
 恭也は、クラスメイトの大人びた、でも子供っぽいところもある月村忍のことを思い出した。
 それをきっかけに妹の美由希となのは、母の桃子。フィアッセ、レン、晶、那美……知人たちの顔が思い浮かぶ。
(俺はあの日常に帰れるんだろうか?……いや、弱気になってちゃダメだ。俺は必ず帰ってやる)

「どうしたの? 急に黙っちゃって」
「いえ、ちょっと家族とかのことを思い出して…」
「そっか。……そういえば、恭也君は礼儀正しいわね」
「そうですか?」
「ええ。肇みたいに初対面から馴れ馴れしくないし」
「…その人は秋穂さんの恋人ですか?」
「んー、まあそんなもんかな。実際に会った事は無いけど」
「実際に会った事がない? ネットで知り合ったとかですか?」
「違うわ。五月倶楽部でよ」
「メイクラブ? 何ですか、それ」
「知らないの!?」
「…はい」
「どこの街にもあるはずよ。本当に知らない!?」
「俺の住む街には無かったような…それに全く聞いたことないです。
 印象的な名前だから一度聞いたら覚えてると思うんですけど…」



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