薬指と薬指(2)

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漁具倉庫に、神楽が入るや否や、
 かちゃり。
真人は後ろ手に扉を閉め、鍵を掛けた。
「どうして扉を閉めるのですか?
 月明かりが無いと中がよく見えませんが……」
「見えなくても問題ない。動く影なんてウソだよ。
 オレはお前を連れ込みたかっただけだ。」
彼女は始め、その声が真人のものだとは思わなかった。
それほどまでに声の質が変化していたのだ。
低く、重く、凶暴な何かを孕んだ声に。
「さて、と。
 知ってることを全部ゲロってもらおうか?」
 チャリ。
神楽は、自分の側頭部にあてられた冷たい筒の感覚に総毛立つ。
「え?」
「オレの妹を殺したヤツはだれだ?」
「え……何のことをおっしゃっているのか、私には……」
「知らないはずないだろう!!
 オレにはわかるんだ、分かってるんだ!」
 バシン!!
怒声と共に神楽の頬に平手が飛ぶ。
平手とは言え、女の顔を打つのにそれほどの力をこめる必要があるのかと問いたいくらい、容赦ない一撃だった。
「と、突然なにを!?」
「お前が正直にっ!!
 答えないからだっ!!」
 バシン!
もう一発。
「ど、どうか正気に戻ってください。落ち着いて。深呼吸をして。
 こんなことをする真人さんではないはずです」
「ほんの20分くらい前にあったばかりのお前に、俺の何がわかる?
 アレは演技。こっちが本当のオレなんだよ!!」
 バシン!
さらに一発。

神楽は知らなかった。
真人は、善人の皮を被ることの出来る、被害妄想系の分裂症患者だということを。
全てを妹の死と関係があるのだと妄想し、偏執的に追求してしまう症状だということを。
そして、その妄想が暴走して、5人もの少女を拉致監禁、拷問の末人格破壊に追い込んだ過去を持つことを。

「で、ですから本当に私は何も存じ上げておりません。
 妹さんのことは、本当にお気の毒だとは思いますが……」
「尻尾を出したなっ!!
 赤の他人のお前が、なぜ妹が殺されたことを知っている?
 お前がその死に関係していたからだろう!!」
「先ほどからご自分でおっしゃっているではありませんか。
 どうかお気を確かに」
「まだシラをきるのかっ!!
 だったらお前が吐きたくなるまで痛めつけてやる。
 お願いだから言わせてくださいといいたくなるくらい、激しくやってやる。
 陵辱して、剃毛して、浣腸して、拷問して、中出しして、妊娠させてやるっ!!」

「陵辱!?」

その時、倉庫の網棚の奥から声がした。



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