11話(1)
(一日目 00:40)
勝沼紳一は恐怖に震えていた。
ここに来る前、
かつて聖エクセレント女学園の修学旅行中のバスをジャックし多くの少女を拉致して
青い果実を貪ったもののその後官憲の手により捕らわれ拘置所で死刑執行の時
を待つ身であった時も幼少の頃から体を蝕んできた病魔も今ほどの恐怖を
彼に感じさせたことはなかった。
それほどの恐怖を虎の仮面の男を倒した者に感じたのだ。
「死」の恐怖ではない「殺される」恐怖を。
やがて、自分の順番が近づくに連れて其の恐怖は増加していく。
子供の頃から面倒を見てくれた古手川も頼りになる木戸、直人といった部下もここには
いない。
孤独だ。
そして今まで頼ってきた金も権力もない。
そんな自分が愚かしくすら思える。
「20番、出ろ」
そう言われて我に返る。
すぐに大小さまざまなバッグの中から適当に一つひったくり紳一は外へ
飛び出していった。
いつもならこの様な輩にはこの世のありとあらゆる苦痛を味あわせて
なぶり殺してやるものを、しかし今の紳一にはその様に思考する余裕もなかった。