グレン様、浮かれる
(一日目 0:42)
次々と参加者の名前が呼び上げられていく。
ある者は苦悶の表情を浮かべ、またある者は思案気な顔つきで出ていく。
そしてとうとう26番、グレンの名が呼ばれた。
だが、彼はいまだに瓦礫の下だった。
先程からずっと助けの声を出しているのだが、参加者達はまったく気づかない。
まったく、無粋な者達だ。
「26番、グレン。どうした、早くしろ、グレン・コリンズ」
早くしろ、と言われても。
まったく身動きがとれなかった。
「何をしている」
例の、椅子に座った男がゆらりと立ち上がった。
コツコツコツ、と靴音を立てながらゆっくりとグレンに近づいてくる。
「何をしていると聞いているのだ、グレン・コリンズ」
屈みながら、抑揚のない声で男は話しかけてきた。
「い、いや・・・見たら分かると思うがね、出られないんだ、助けてくれないか」
「・・・フン」
男は乱暴にグレンの頭を鷲掴みにすると、一気に引っこ抜いた。
「きぃぃひぇぇぇぇぇぇ!も、もっと丁寧にしてくれたまえ!高貴な私の体が・・・」
グレンの体を初めて目の当たりにし、参加者達は一斉に息をのんだ。
部屋は薄暗く、彼は壁際にいたので、誰もよくよくその『異形』を見ていなかったからだ
(タイガージョーが吹き飛ばされたときは既に瓦礫の下だった)。
グレンの首から下は、何もなかった。ただ、ぬらぬらと黒光りする五本の触手を除いて。
「早く行け。グレン・コリンズ。貴様の番だ」
「わわわ分かったから、その手を離したまえ!助けてくれた礼はしよう、
しかしこのままでは動くに動けぬ!まずはその手を・・・」
フン、と鼻を鳴らしながら男は手の力を緩めた。
ようやく、自由に動けるようになったのだ。
異常な事態の中で、心の中に爽快感が吹き荒れる。
この呑気さとポジティブシンキングな思考が彼を彼たらしめるものだ。
それに何より、この部屋から出られる。薄暗く、陰気くさい場所にいるのは苦痛だった。
センスの最悪なディパックを触手の一本で取り(以外に軽かった)、部屋の出口に向かう。
「待て」
男が、また例の抑揚のない声でグレンを呼び止める。
「な、何かね?」
男は顔をグレンの耳元に寄せると、ゆっくりと言った。
「頑張れよ、グレン・コリンズ。貴様には期待している」
「な・・・」
期待している・・・だと?この私に?
それは・・・つまり・・・私がこの殺戮ゲームの「優勝候補」だということか?
さらに心の中に爽快感が吹き荒れる。
そうだ。やはり私は、この世界の王になるべき人間なのだ。
このゲームに勝つことが、その第一歩になりはしないだろうか?
「ふ・・・ははは、任せたまえ、君ぃ!私を誰だと思っているのかね?
陸島万物、森羅万象全ての生物ピラミットの頂点に立つ男、それがこの私、グレン・コリンズなのだからな!」
さあ、行くぞ、グレン・コリンズ!これは聖戦である。
まさしく、極上の戦争だ。これを勝ち抜けるのは、私をおいて他に無し!
浮かれ気分のグレンの耳には、その後男がぼそりと放った一言は、耳に入らなかった。
「せいぜい踊れよ、グレン。貴様は我々のいい研究材料なのだからな」