守りたいもの、ありますか?(1)
(一日目 0:16)
高町恭也(8番)は驚愕していた。
(何だったんだ? あの男の動きは)
もともと彼はこんな馬鹿げた殺し合いなどするつもりはなかった。
ルール説明が終わった後、虎の覆面を被った男が主催者に刃向おうとした時には、援護しようとしたくらいだ。
だが、男はその場を一歩も動かずに、必殺技らしきものを放とうとしていた虎男を壁にふっ飛ばして絶命させた。
小太刀二刀・御神流と呼ばれる武術の心得がある恭也だったが、男の動きを捉える事は全くできなかった。
まるで、一瞬男以外の時間が止まったようだった。もちろんそんなことはありえないが。
他の参加者をそれとなく観察しながら、恭也は全員助かる方法を模索する。
(俺一人で奴に刃向かってもまず殺られる。だが、この状況下で協力者を探すのはかなり難しい。八方塞がりだな)
「8番どうした! 高町恭也。早く出ろ」
ふと恭也は自分が呼ばれているのに気がついた。
どうやら考え込んでいて、自分が呼ばれたのに気付いていなかったらしい。
恭也は少し慌てて立ち上がると、無造作にバッグを手に取り部屋から出た。
廊下に出ると、校舎の出口へと歩きながらバッグの中身を確かめる。
中身は………消毒薬・抗生物質・包帯・絆創膏などが入ったポーチだった。
(救急医療セットって感じだな。殺し合いに乗るつもりのない俺にはピッタリだ、はは)
恭也は少々乾いた笑みをもらす。
確かに殺し合いに乗るつもりはなかったが、だからといって全くの丸腰という状況は望んでいなかった。
彼の見たところでは、参加者の中にはかなりの手練が何人かいるようだった。
そんな相手と遭遇した場合、武器なしで立ち向かうのはかなり不利だろう。
それに、膝の古傷のこともあり長時間の戦闘は無理だ。
学校を出てすぐに森の入り口に隠れて、闘いに慣れていない一般人を保護するつもりだったのだが、
支給品が武器でないとなると、一般人どころか自分の身さえ守れるかどうか微妙だ。
(仕方ない、どこかで武器になりそうなものを探すしかないな)
恭也は学校を出ると、森の中へと入っていった。