三者択一(アタリなし)

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(一日目 8:09 村落の一軒)

カタカタカタカタ……。
「……………」
カタカタカタカタ……。
「……………」
カタ……。
「……駄目だわ〜」
ノートパソコンを叩く指を止めて、法条まりな(No,32)はぐったりと椅子の背もたれに
体重を預けた。
「そう簡単にいくとは思ってなかったけど、ここまでとはね〜」
雑貨屋近くの民家で分析用のノートパソコンが手に入ったのは幸運だった。
だが、それだけではどうにもならない。
「(結局、今の所分かったのは発信機以外に集音マイクが内蔵されてる事ぐらい)
 (……それにしたって、『ある』って事が判明しただけだもんね……)」
正直、内部構造については全く不明のままと言って良かった。
いかんせん、うかつに分解しようものなら爆発しかねない代物だ。
その爆発力は不明だが、まりなの指を吹き飛ばす位は確実にあるだろう。
「(第一、ここで分解できても……本番では『こいつ』他人の首に嵌ってるわ……)」
つまり高熱や激しい衝撃など、首輪を嵌めてる本人に被害が及ぶ方法は不可と言う事になる。
「(て事は……、私はこれを外部を破損する事無く内部を解析して、かつ対象者に被害が
 及ばない解除法を見つけなきゃならないのよね……)う〜〜〜〜……」
思わず頭を抱えて机に突っ伏す。
確かに調査員の訓練過程で多少の電子機器の取り扱いは学習していた。
しかしながら、それはあくまで「多少」―――専門の工具があれば無線の修理ができる―――
その程度のレベルだ。本業には叶わない。
だが、諦める訳にはいかなかった。


「(オジサマが残してくれた首輪だもの、絶対に解明しないと……!)」
ではどうするか?
「まあ、ベストは専門の技術者が解析用の機械を使う事なんだけど。
 機械工学の技術者に内部スキャンが可能な機械……ハァ、
 そんな大病院か研究所クラスのがこんな島に揃ってる訳……?」
ふと、彼女の頭に何かが引っかかった。
「……………!」
突然まりなは傍らの手帳に手を伸ばした。あわただしくページをめくってゆく。
「(部長からデータを見せてもらった時には悪い冗談と思ったけど!)……あった!」
―――そこには、3人の名が書かれていた。

1・なみ
 確実性 A
  ・ある程度のスキャン、及び分析機能を保有している。
   間違いなく、この島における最高の性能を持つ機体。
   協力できれば首輪の内部構造を把握できる可能性が高い。
 危険性 A
  ・数時間前の遭遇から推測するに、彼女は殺戮側のスタンスで行動している。
   再度遭遇した場合、交渉の余地なく攻撃を受ける可能性が高い。
  
2・グレン=コリンズ
 確実性 B
  ・機械工学、ロケット工学、その他もろもろの権威。
   知識面では今大会参加者の中でも上位に位置している。
   やはり、首輪の構造分析にはかなり役立つ人物になるはず。
 危険性 B
  ・そもそも既に人間ではない。
   1に比べれば交渉は容易だが、協力要請には困難が予測される。
   また、生理的にどうも好きになれない(まりなの趣味的に)

3・星川 翼
 確実性 B−
  ・物質の破砕点を見抜く「目貫」と呼ばれる能力の保有者。
   もし首輪の破砕点を見抜くことが可能ならば、破壊が可能となるはず。
   データ上の性格が正しければ、交渉は可能と思われる。
 危険性 C
  ・破壊された場合、内部構造の分析が不可能になる可能性がある。

 
「まずはこの3人を探すところから始めた方が良さそうね……」
正直、危険性は極めて高いと言えた。どちらかといえば無謀の範疇だろう。
「……でも、やらない訳にはいかないわよね。オジサマ」
まりなはそう呟き、立ち上がった。



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