第一回放送 6:00AM
カチリ、時刻む針が正確に一直線にならぶ。
太陽が上がったとはいえまだ薄暗い。
時刻は正確に午前6:00。
日の光の届かぬ薄暗がりの中、
その男は六時間前と変わらぬ姿勢で
その部屋には不釣合いなきらびやかな椅子に腰掛けていた。
やおらその腕を肩の高さにまで上げると男は一つところを指差す。
その先にはなんの変哲もないマイクスタンドにマイクがすえつけられていた。
やがて男がゆっくりと手を下ろし、先ほどと同じ体勢に戻ると
傍らに控えていた部下の一人がマイクスタンドに向かいマイクを手に取った。
朝日を受けて浮かび上がる男の姿は異様なものだった。
ミイラ男よろしく左目と口元を除いて全身が薄汚れた包帯に覆われていた。
だらしなく口を開き、さも楽しげにマイクに向かって話し始めた。
「へ、へひひひひひ…へけけけけけ…
お、お、おまぁら、元気にしちゅうがか?
おらぁが、素敵医師ちゅうが、
あ、ああ-……ただ本名ちゃうき、芸名ちゅうか、通り名やき。
そ、そ、その先生の六時の定時放送がやき。
この放送は一日四回、六時間ごとに流すき、よぉーお聞きとおせ。
い、今まで死んだがは、
6番タイガージョー、10番貴神雷贈、4番伊藤臭作、
21番柏木千鶴、30番木ノ下泰男、35番広田寛
い、以上六名が死んでしもうたきね。
どうなが、殺る気になったがか?
つ、つ、次の放送まで六次間あるき、ぎちっりやるがええがよ。
ひ、ひへひへひひひ、ひ、ひへ…」
狂人を思わせる気味の悪い笑い声でその放送は終わった。