見えざる戦い(6)
ワープ番長は、自分の真横に突如出現した恭也の姿に驚愕した。
自分を上回るスピードで、小太刀が振り下ろされる。
このままでは右鎖骨を、肩甲骨を確実に折られてしまう。
もしかしたら、肺まで潰されるかも知れない。
「ひ!」
既にかわしようが無くても、体は無意識の回避行為を取る。
(頼む、死なないでくれ。)
それは恭也の優しさの表れわれでもあったが……
同時に、必ず命中すると自信を持っているからこその思いでもあった。
しかし。
ぶおん!!
刀を振り下ろし切ったとき、ワープ番長の姿はそこに無かった。
彼はそのすぐ脇に、立っていたのだ。
「な―――」
恭也には信じられなかった。
自分の剣筋は完全に彼の肩口を捉えていたはず。
ならば。
(神速を避けたというのか!!)
満を持して放った神速がかわされる……
それは恭也にとっての拠り所、御神流の敗北を意味していた。
がくり。
膝から崩折れる恭也。
「恭也くん!?」
「避けた……避けたぞ。ボクは。あの神のような速度の斬撃を!!」
どうやって避けたのかは彼自身にも定かでない。
しかし、極限状態に追い詰められたヒーローが新たな力に覚醒することは、
ある意味お約束といえばお約束。
ヒーローの器でないにもかかわらず、ワープ番長はそう結論付けた。
「猪……猪乃くん!? あなた、いつの間に……」
狼狽する秋穂を無視して、高揚した声で恭也に語りかけるワープ番長。
「キミは弱い。ボクには勝てない。脅威ですらない。
パワーアップしたこの猪乃健の、足元にも及ばない!!」
「……」
「だから、ここは見逃してあげよう。どこへなりとも失せるといいよ。
ボクは武士の情けを知る者だからね」
「……」
「さて、ボクはそろそろ行こう。ボクの仲間を見つけるためにね。
そして、あのいまいましい主催者を倒すためにね」
そう言い残し、ワープ番長は森の奥へ姿を消した。
「なに、あれは。ねえ、恭也……
くん……?」
恭也は膝をついたまま、微動だにしなかった。
―――ワープ番長はまだ気付いていなかった。
彼が「神速」からの攻撃を回避できたのは、所持アイテムによる恩恵だったということを。
『素早い変な虫』―――回避力を大幅に上昇させるアイテムの力で、辛くもピンチを逃れただけだと。