東ドイツ国歌はいつも唐突に(3)

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ランスは心底楽しそうな高笑いを上げながら、ずんずんと腰を前後させている。
―――誰もいない空間に向かって。
そして、その脇でランスを見下す双葉。
クールな半眼には情欲も羞恥心も宿っていない。
 「ホント男ってのは、何かあるとすぐにえっちな方向に持ってこうとするんだから。
  あーあ、ホンモノの白馬の王子様って、やっぱりいないのかなぁ……ねぇ、こけし。」
黄色い小さな花に向かって、また一人ごちる双葉。
まるで首を縦に振っているかのように、花びらが揺れた。

そう。
全ては双葉の『幻術』だった。
鉢植えの花―――芥子の麻薬成分を抽出し、空気中に散布。
朦朧とした意識に言霊でもって幻を吹き込む―――幻術。
ランスが服を脱ぎだしたとき、それはもう完了されていたのだ。

双葉はランスが服を脱ぎ捨てた際に放っぽった斧を手に取る。
ずしりと重い手ごたえ。
 「さてと、コレは危ないから没収ね。あとはこのバカをどうするかだけど……」
 「がはははは、グッドだ、お嬢ちゃん!!」
ランスは幻覚の中で絶好調のようだ。
 「ま、いっか。アタシはこの森の中では無敵なんだし。
  放っときましょ、こけし。」

朽木双葉―――平安より伝わる陰陽師、朽木家の跡取。
植物を操る能力に秀でるこの一族の中で、近世稀に見る逸材といわれる天才児は、
後ろを振り返ることなく悠々とその場を立ち去った。


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