お姉ちゃんといっしょ(1)

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(一日目 2:30)

上に体操服、下にブルマという涼しい格好の常葉愛は、左右にフラフラ揺れながら、大通りを歩いていた。
左右にフラフラ揺れているのは、身長にして30センチは低い双子の少女に両腕を捕まれているから。
そして身を隠しやすい森ではなく捕捉されやすい大通りを歩いているのは、この栗色の髪の、愛くるしい双子の片割れが森の中に住む毛虫や蜘蛛を物凄く嫌がったからだった。
生き残ることに対して真面目な奴の態度じゃないよね。
愛は嘆息して、3人分のリュックをかつぎ直す。こんな重いものを彼女たちに持たせるわけにはいかないし、かといって捨てていくわけにはいかない。
正直なところ、自分ひとりが生き残ることにさして興味はなかった。
だけど、こんな無垢な少女たちが目の前で殺されるのを黙って見ていられない程度には、熱い正義感を持っていた。


「ねえ、ちょっと。逃げたりしないからさ、もうちょい離れてくれないかな」
二人の少女が、あまりにべったりとくっついてくるのに閉口して、愛は足を止める。
「そんなぁ……。お姉ちゃん、私たちのこと嫌いになりました?」
愛の右腕をぎゅっと握って離さない、姉のしおりが寂しそうにうなだれる。
「わ、私は腕を離しても平気だよ。でも、しおりだけお姉ちゃんと一緒は、ずるい」
愛の左腕にしがみついている、妹のさおりが口を尖らせた。
愛は、はぁ、と溜息をついて、天を仰ぐ。
星が綺麗だなぁ。
思わず現実逃避しそうになる。
でも、まあ。
少なくとも、こうして周囲が真っ暗なうちは、道沿いが一番安全かもしれない。
確かに月の光でこちらの位置は丸見えだけど、それは逆に、
接近してくる者がいれば、一発で発見できるということだ。
愛は、自分のつけている、神のブルマのことを考えた。
このブルマの力があれば、不意打ちさえなければ、この2人を守ることはできるだろう。
であれば、木陰からいつ襲われてもおかしくない森の中より、
開けた場所の方が安全なのは明白である。
長射程のライフルを持った者がいたとて、この暗闇の中では狙撃もできまい。
幸いにして、双子の袋から出て来たものは、暗視スコープと連射式のモデルガンだった。
出発前の説明によれば、同じ武器は2つ存在しないらしい。
ここに暗視スコープがあるということは、
彼女たちは夜の情報戦で大きなイニチアチブを取ったことになる。
後は、朝になる前に安全に休める場所を探そう。
そう、当座の予定をまとめて、愛は、彼女たちの唯一の護身用武器である
金属バットを握り締めた。



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