眠り姫と暗殺者(2)

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(一日目 1:52)

廃村 病院跡

何故こんな状態になったのだろう?
洗面器の水にタオルを濡らしつつ、アインは考えた。
彼女の横、診察用のベッドには一人の少女――と言ってもアインよりは年上だが――
が寝かされている。
涼宮 遙―――アインが確認した中では最弱と呼べる参加者だ。

―――何故、私は彼女を助けてしまったのか?
それは、ここに辿り着いてからアインが幾度と無く自問してきた事だった。
このゲームが絶対的強制力によって管理される以上、感傷・同情は致命的の筈だ。
幾度と無く死線を潜ってきたアインの本能はそう告げている。
では何故?
「んっ……うぅん……」
その時、遙が少し苦しそうな声を挙げた。近づき様子を見る。
「……凄い寝汗ね……」
やむなくアインは遙の服をはだけさせ、寝汗を拭う。
「………?」
ふと、彼女の服のポケットから一枚の写真が落ちた。拾い上げて、月の光に照らす。
三年前の日付の写真であった。少し恥ずかしげな遙。その横の活発そうな友人。
―――後ろの二人の少年はボーイフレンドだろうか?
アインが生きていた世界の中では絶対に存在しない「日常」がそこにはあった。
「………ああ、そうなのね」
アインの口元に、自嘲にも似た笑みが浮かぶ。
なんのことは無い理由だった。私は―――彼女に憧れてしまったのだ。
彼女は目覚めれば、やはりこの状況に怯え、恐怖するのだろう。
―――それすらも、アインにとっては決して手に入らない感情だったのだから。
「とりあえず、守る……後の事は……」
戦闘を司る本能が懸命に遙の抹殺を指令するのを、アインは無視しつつ呟いた。
「後になってから―――考えるしか、ないわ」



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